下水処理技術の進化と都市の水環境 vol.1

セーヌ川でのトライアスロンは、オリンピックの中でも特に注目を集めたイベントの一つでした。
しかし、都市部の川で泳ぐことに対して、多くの人が衛生面での不安を抱いた事も事実です。

実際には、現代の水処理技術の進化により、セーヌ川の水質は大幅に改善されています。この記事では、水処理技術者の視点から、セーヌ川の水質改善の背景にある技術や取り組みについて詳しく解説します。
特に、下水道システムの役割や大雨時の水処理の仕組み、そして市民の心理的抵抗を克服するための方法について考察します。

これにより、都市の水環境がどのように進化してきたのかを理解するための手助けになれば幸いです。

かつて河川汚染の主な原因は、工場からの産業排水でした。しかし、1970年代以降、各国で環境規制が強化され、産業排水は大幅に削減されました。その結果、現代の河川汚染の主な原因は、一般家庭からの生活排水に移行しました。

生活排水には、トイレやキッチン、お風呂場からの排水が含まれ、特にトイレの排水には多くの細菌が含まれています。これが河川の汚濁の主な原因となっています。

生活排水の管理は、現代の水処理技術において重要な課題となっています。

下水道システムには、雨水と生活排水を分けて処理する「分流式」と、一緒に流す「合流式」の2種類があります。分流式は環境負荷が低く、近年では主流となっていますが、古くからある都市部では合流式が多く見られます。

合流式は、19世紀のペスト対策として都市の浸水を防ぐために整備されました。大雨時には、下水道がオーバーフローし、未処理の排水が河川に流れ込むことがあります。

これを防ぐために、地下貯留施設が建設され、雨水を一時的に貯めることで、晴天時にゆっくりと処理する仕組みが導入されています。

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