2026/5/12 21:36
今日の水の言葉

H2Oは、水ではない
(英:H2O is not water.)
オーストリア出身の哲学者であり文明批評家、イヴァン・イリイチの著書『H2Oと忘却の水』(1985年)の中核にある概念です。
イリイチは、近代化というシステムが、人間の物質に対する認識をどのように変質させたかを客観的に観察しました。 近代以前の社会において、「水」は単なる消費物ではありませんでした。人々は公共の泉や井戸に集まり、川は都市の空間の中心として、歴史や文化、人々の対話を成立させる哲学的な存在でした。
しかし、近代的な都市計画と配管技術(上下水道)が完備されるにつれ、その状況は一変します。水は各家庭へ密閉された管を通って供給され、ただ不要物を洗い流して下水へと消えていく、工業的に管理された「無機質な洗浄液」へと役割を変えました。彼は、現代の私たちが扱っているものは、もはや豊かな意味を持った「水(Water)」ではなく、単なる化学的な資源である「H2O」に過ぎないと指摘します。
物理的・化学的な成分は全く同じであっても、社会システムとインフラの構造が変わることで、人間がその対象に見出していた本来の意味や価値が完全に削ぎ落とされてしまうという事実を記述した言葉です。
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