2026/4/9 21:22
今日の水の言葉

運命は、荒れ狂う川に似ている
(伊:La fortuna è come uno di quei fiumi rovinosi...)
16世紀初頭、イタリアの政治思想家ニッコロ・マキャベリが著した『君主論』の第25章に記されている言葉です。
マキャベリは、人間の力では予測も統制もできない「運命(フォルトゥナ)」の猛威を、激しい雨によって引き起こされる「川の氾濫」という物理的な自然現象に例えました。
氾濫した川の濁流は、圧倒的な質量と運動エネルギーを持って平野を沈め、木々や建物を破壊します。その物理的な力の前に人間は無力であり、怒り狂う水流から逃げることしかできません。
しかし彼は、ここに客観的な事実を一つ付け加えます。「水は、堤防や堰(せき)が築かれていない場所へ向かって激しく流れ込む」という流体力学的な法則です。
すなわち、天候が穏やかで川が静かな時期に、あらかじめ土木工事を行って強固な堤防を築いておけば、次に増水した際にも水路に沿って安全に水を流すことができ、致命的な被害を防ぐことができると指摘しました。
これは「運命は神の意志だから逆らえない」という当時の宗教的な精神論を否定したものです。自然の暴力性(水の質量と重力)を客観的に観察し、事前のエンジニアリング(治水工事)によって被害の確率と規模を計算可能なものに落とし込むことができるという、冷徹な政治力学を文章化した記述です。
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