Water Digital

2026/3/26 21:33

今日の水の言葉

高瀬舟(たかせぶね)

大正5年(1916年)に発表された、森鴎外の短編小説です。京都の中心を流れる高瀬川を舞台としています。

高瀬舟とは、京都の罪人を遠島(流罪)にするため、大阪へ向けて川を下る際に使われる小舟のことです。物語は、弟を手にかけた罪で護送される男・喜助と、彼を護衛する同心(役人)・庄兵衛が舟の上で交わす会話を中心に進みます。

庄兵衛は、罪人であるはずの喜助が晴れやかな顔をしていることに疑問を持ちます。喜助は、これまでどれだけ働いても借金に追われる生活でしたが、島流しになるにあたり「公儀から与えられた二百文(わずかなお金)」を初めて自分の財産として持てたことに、深い満足感を抱いていたのです。

鴎外はこの舟の上で、安定した生活を送りながらも常に生活苦や不満を感じている役人と、すべてを失って流されていく中で精神的な安らぎを得た罪人の姿を対比させました。

夜の川を下る舟の静かな情景描写とともに、人間の欲望には際限がないという事実と、どこで区切りをつけるか(足るを知るか)という客観的な問いを、感情を交えずに書き留めた作品です。

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