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2026/7/28 22:00

栗田工業子会社の分析不正の根本原因について考察する

※本トピックスは、2026年7月21日に栗田工業株式会社から正式発表された「クリタ分析センターにおける分析サービスの不適切事案の判明について」のプレスリリース情報等を基に、水処理の現場に携わってきた筆者の経験と推察を交えて考察したものです。あらかじめご了承ください。


前代未聞の未測定事案。事の顛末と本記事の前提

2026年7月21日、水処理業界トップの栗田工業から耳を疑うようなプレスリリースが発表されました。100%子会社である「クリタ分析センター」において、排水や土壌などに含まれる有害物質であるアルキル水銀の分析を、約3年間もの間、実際に測定することなく「検出されない」とする計量証明書を顧客へ発行していたという事案です。

対象となった期間は2023年6月1日から2026年7月7日まで。影響を受けた顧客は533社、未測定のまま処理された検体数は実に3,806件に上ります。計量法に基づく公的な「計量証明書」が不正に発行された件数だけでも2,373件です。1日あたり約3件のペースで、存在しないデータに基づく公的な証明書が世に出続けていたことになります。

水処理や環境分析の現場に身を置く人間にとって、この事態は非常に特異に映ります。アルキル水銀は、水俣病の原因物質であるメチル水銀やエチル水銀を含む有機水銀化合物の総称であり、中枢神経系を侵す極めて毒性の高い物質です。そのため、日本の水質汚濁防止法に基づく環境基準や排水基準においては、「検出されないこと(定量下限値 0.0005 mg/L 未満)」という最も厳しい水準が求められます。

これまでも、分析業界や製造業の検査工程において、いわゆるデータ改ざんの事案は少なからず発生してきました。過去のダイオキシン問題などでも、基準値をわずかに超えた数値を、元請けの指示や現場の判断で意図的に書き換えるといったケースはありました。しかし、今回の事案はそれらとは決定的に次元が異なります。「数値をいじった」のではなく、「そもそも3年間一度も測っていない」のです。

発表によれば、直接の発端は2023年6月に当該分析機器に不調が生じたことだとされています。実務の定石から言えば、機器が故障したのであれば修理を手配するか、代替機を用意するか、あるいは一時的に外部の同業他社へ分析を再委託(外注)するなどの措置をとります。それがなぜ組織内で適切に処理されず、3年間も「測ったことにしておく」という異常な運用が常態化してしまったのか。

この異常事態がなぜ長期間発覚せずにすり抜けてしまったのか、計量証明事業という制度の仕組みと、環境計量士を頂点とする現場の分業体制が抱える構造的な死角について、水処理業界に長くかかわっている筆者の経験で考察したいと思います。

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