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2026/6/9 23:29

意外と厳しい排水規制。アジアの水処理事情のリアル

先日、海外駐在時代に知り合った友人と会食をしているときに、現在の海外拠点の状況などを色々と聞く機会がありました。

私が駐在していた10年ほど前からそうでしたが、いまだに「東南アジアの排水基準は緩いから、日本よりもCAPEX(設備投資費)もOPEX(運営費)も安く済むんでしょ?」という認識を持っている日本企業が多いと聞き、根深い誤解を痛感しています。

電力供給の安定性や従業員の定着率、各種インフラコスト、そして何より環境対策に関わる費用など、あらゆる要素を考慮すると、円安の昨今では「本当に海外移転がコスト削減になるのか」は極めて慎重に再考する必要があるでしょう(もちろん、コスト削減目的ではなく、グローバルな事業展開として工場を立地するケースは別ですが)。

日本と海外の工場運営に関わる全体比較は流石に私の専門外ですので、本トピックスでは、水処理のプロとしての経験から、アジア(特に東アジア、東南アジア、インド)の生産工場における水事情のリアルについて解説していきます。

新興国の規制は緩くない。新興国で水規制強化の現実

なぜ、日本の経営層や企画部門の多くは、いまだに「アジアの新興国は環境規制が緩い」と思い込んでしまうのでしょうか。その原因の一端は、過去の成功体験や、一世代前のイメージをアップデートできていないことにあると思います。確かに2000年代初頭あたりまでは、経済発展を最優先し、工場排水の少々のインバランスには目をつぶる国も少なくありませんでした。

しかし、現在の新興国政府のスタンスは180度異なります。経済成長を遂げた国々がいま最も恐れているのは、環境汚染を端緒とするローカル住民の激しい反対運動や暴動です。政権の安定や、外資系企業を誘致し続けるための環境先進国としてのブランディングの観点からも、環境規制の強化は国策の最優先事項となっています。

さらに、欧米を中心としたグローバルなESG投資の潮流が、この動きを決定決定づけました。サプライチェーン全体での環境配慮が求められる現在、新興国政府が規制を緩める理由はどこにもありません。むしろ、後発だからこそ、欧米や日本の基準をベースにして一部の項目では日本より厳しい先進的な規制値を導入しているケースすら珍しくないのです。

こうしたマクロ環境の変化を知らずに、日本の常識や「これくらいで大丈夫だろう」という甘い見通しで現地にプラントを設計してしまうと、進出後に「一発アウト」の巨額な罰則を科されたり、工場の操業停止に追い込まれたりするリスクに直面します。結果として、予算に組み込んでいなかった巨額の追加投資(CAPEX)や、想定の数倍に膨れ上がる維持管理費(OPEX)に泣くことになるでしょう。

新興国における水処理は、もはやコストを浮かせる対象ではなく、事業継続そのものを揺るがしかねない経営リスクの一つと言っても過言ではありません。

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