【初心者向け】水処理の重要指標:導電率と比抵抗とは?

安全で効率的な水処理を行うためには、対象となる水の性質を正確に把握することが不可欠です。

水質を示す指標は数多くありますが、今回はその中でも特に基本的で、水の電気的な性質からイオンの総量を評価する「導電率(どうでんりつ)」「比抵抗(ひていこう)」について解説します。これらの指標は、様々な水処理プロセスにおいて水質管理の基本となるものです。

導電率(電気伝導率、EC:Electrical Conductivity)とは、「水の電気の通しやすさ」を示す指標です。

純粋な水(H₂O)自体はほとんど電気を通しませんが、水中に塩類や酸、アルカリなどの電解質が溶けてイオン(例:Na⁺, Cl⁻, Ca²⁺)が存在すると、それらが電気を運ぶ担い手となり、電気が流れやすくなります。

水中に溶けているイオンの量が多いほど、電気は流れやすくなり、導電率の値は高くなります。

単位としては、国際単位系(SI)ではジーメンス毎メートル〔S/m〕が用いられますが、日本の水処理現場では慣例的にミリジーメンス毎メートル〔mS/m〕やマイクロジーメンス毎センチメートル〔µS/cm〕が多く用いられます(10 µS/cm = 1 mS/m)。

比抵抗(電気抵抗率、Resistivity)とは、「水の電気の通しにくさ」を示す指標で、導電率とは逆の性質を表します。

水中に溶けているイオンの量が少ないほど電気は流れにくくなり、比抵抗の値は高くなります。つまり、水が純粋であるほど比抵抗値は高くなります。

単位としては、オームメートル〔Ω·m〕やメガオームセンチメートル〔MΩ·cm〕が用いられます(1 MΩ·cm = 10 kΩ·m)。特に純水や超純水といった高純度の水の管理においては、比抵抗値が重要な指標とされます。

導電率と比抵抗は、互いに逆数の関係にあります。以下の式で表されます。

  • 導電率 = 1 / 比抵抗
  • 比抵抗 = 1 / 導電率

この関係から、どちらか一方の値を測定すれば、もう一方の値を算出することができます。一般的に、イオン濃度が比較的高い水(水道水、工業用水、河川水、排水など)では導電率〔µS/cm, mS/m〕が、イオン濃度が極めて低い高純度の水(純水、超純水)では比抵抗〔MΩ·cm〕が、それぞれ水質を表す指標として使われる傾向があります。

例えば、理論上の純水(全く不純物を含まない水)の比抵抗値は、25℃において約18.2 MΩ·cm(導電率では約0.055 µS/cm)となります。

導電率や比抵抗は、水中に溶解しているイオン性の不純物の総量を、迅速かつ連続的に監視できるため、水処理の様々な場面で活用されています。

  • 原水水質の把握: 取水する河川水や井戸水、供給される水道水などの導電率を測定し、水質の変動を監視します。
  • 純水・超純水の管理: 半導体製造や医薬品製造、精密洗浄などに用いられる純水・超純水が、要求される純度(比抵抗値)を満たしているかを確認します。製造装置の性能評価にも使われます。
  • 工程管理: ボイラー給水や冷却水など、特定の水質範囲に管理する必要がある工程で、導電率を連続監視し、薬品注入量の調整やブローダウン(排出)の判断を行います。
  • 排水管理: 工場排水などの導電率を測定し、処理が適切に行われているか、環境基準を満たしているかを確認します。
  • RO膜などの性能評価: 逆浸透(RO)膜などの分離膜処理において、原水と処理水の導電率を比較することで、膜の性能(イオン除去率)を評価します。

このように、導電率・比抵抗の測定は、プロセスの安定稼働、製品の品質確保、環境保全において重要な役割を担っています。

導電率・比抵抗の測定には、専用の測定器(導電率計、比抵抗計)が用いられます。多くの場合、センサー(検出部)を水中に設置し、連続的に測定を行います。

重要な注意点として、水の導電率(比抵抗)は水温によって大きく変化するという性質があります。一般的に、水温が1℃上昇すると導電率は約2%増加します。そのため、異なる温度で測定した値を比較評価する場合は、基準とする温度(通常は25℃)での値に換算する「温度補償」を行う必要があります。

近年の測定器の多くは、温度センサーを内蔵し、自動で温度補償を行う機能を持っています。
また、正確な測定のためには、電極の汚れや劣化を点検し、標準液を用いた定期的な校正(比較検査)を行うことが不可欠です。

導電率と比抵抗は、水の電気的な性質を利用して、水中のイオン性不純物の総量を把握するための基本的な指標です。水処理においては、原水から純水、排水に至るまで、幅広い対象の水質管理に用いられています。これらの指標を正しく理解し、適切に測定・管理することが、水処理プロセス全体の最適化に繋がります。

水質管理の方法、測定器の選定や校正、トラブルシューティングなどでお困りのことがございましたら、専門知識を持つ業者にご相談いただくことをお勧めします。

専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。

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