【技術者向け】水処理プラントの安定稼働を支える主要バルブの種類と選定ポイントを徹底解説
水処理プラントの安定稼働において、配管内を流れる水の流れを制御する「バルブ」は、まさに心臓部とも言える重要な役割を担っています。適切なバルブを選定し、正しく使用・管理することが、水処理全体の品質と効率を左右すると言っても過言ではありません。
本記事では、水処理の現場技術者の視点から、水処理プラントで頻繁に使用される主要なバルブの種類とその特徴、そして選定における重要なポイントについて詳しく解説していきます。
■ そもそもバルブの役割とは?
バルブは、配管システムにおいて流体(水、薬液、汚泥など)を「通す・止める(開閉機能)」、「量を調整する(流量調整機能)」、そして「逆流を防ぐ(逆流防止機能)」という3つの基本的な役割を担っています。これらの機能を、プラントの各工程の目的や流体の特性に合わせて、最適な種類のバルブを使い分けることが求められます。
■ 【種類別】水処理プラントで活躍する主要バルブ6選
水処理プラントでは、扱う流体の種類(原水、処理水、汚泥、薬液など)や圧力、温度が多岐にわたるため、様々な種類のバルブが使用されています。ここでは、特に代表的な6つのバルブについて解説します。
1. ゲートバルブ(仕切弁)
円盤状の弁体(ディスク)を流路に対して垂直に上下させることで開閉するバルブです。
- 特徴: 全開時の流体抵抗が非常に小さく、圧力損失が少ないのが最大のメリットです。反面、中間開度での使用は弁体に振動や摩耗が発生しやすいため、流量調整には不向きです。
- 主な用途: 全開または全閉で運転されることが多い、プラントのメイン配管やタンクの元弁など、頻繁な開閉を必要としない箇所の水処理ラインで使用されます。
2. グローブバルブ(玉形弁)
弁箱(ボディ)が球体(グローブ)に似ていることからこの名が付きました。流体の流れをS字型に変え、弁体を上下させることで流路の面積を変化させ、流量を調整します。
- 特徴: 流量の微調整に優れており、高いシール性を持ちます。ただし、構造上、流体抵抗が大きく圧力損失が発生しやすいという側面もあります。
- 主な用途: 薬液注入ラインの流量調整や、サンプリングラインなど、精密なコントロールが求められる水処理工程で活躍します。
3. ボールバルブ
弁箱内に球状の弁体があり、その中心に貫通穴が空いています。ハンドルを90度回転させることで、穴の向きを変えて流路を開閉します。
- 特徴: 操作が迅速(90度開閉)で、全開時の流体抵抗が小さいのが利点です。構造がシンプルなためメンテナンス性にも優れています。
- 主な用途: 操作の頻度が高い系統や、緊急遮断が必要な箇所の水処理ラインに適しています。
4. バタフライ弁(バタフライバルブ)
円盤状の弁体が、弁箱内で軸を中心に回転することで開閉するバルブです。
- 特徴: 構造がシンプルで軽量かつコンパクトなため、設置スペースを取りません。特に大口径の配管に適しており、コストパフォーマンスにも優れています。ボールバルブ同様、90度での迅速な開閉が可能です。
- 主な用途: 大口径の送水ポンプの吐出側や、エアレーション用のブロワ配管など、大流量を扱う水処理ラインで広く採用されています。
5. ダイヤフラムバルブ
ゴムや樹脂製の隔膜(ダイヤフラム)を上下させることで流路を開閉するバルブです。
- 特徴: 流体が駆動部(ボンネット部)に接触しない構造のため、スラリー(汚泥など)を含んだ流体や、腐食性の高い薬液に対しても優れた耐久性を発揮します。液だまりが少なく、サニタリー性にも優れています。
- 主な用途: 汚泥処理ラインや、次亜塩素酸ナトリウムなどの薬液注入ラインといった、特殊な流体を扱う水処理工程で不可欠なバルブです。
6. 逆止弁(チェックバルブ)
流体の流れを常に一定方向に保ち、逆流を自動的に防止する機能を持つバルブです。
- 特徴: 外部からのハンドル操作や動力などを必要とせず、流体の圧力(流れ)そのものを利用して自力で作動します。構造によってスイング式、リフト式、ウエハ式など様々な種類があります。
- 主な用途: ポンプの吐出側に取り付け、ポンプ停止時の逆流による羽根車の逆回転やウォーターハンマー現象を防ぐ目的で設置されます。これは水処理プラントのポンプ保護において最も重要な用途の一つです。また、複数の配管が合流する箇所で、一方のラインから他方への逆流を防ぐためにも使用されます。
■ 水処理に適したバルブ選定の重要ポイント
最適なバルブを選定するには、単に種類を知っているだけでは不十分です。以下の点を総合的に考慮する必要があります。
- 流体の特性: 清水か、汚泥か、薬液か。腐食性や摩耗性の有無。
- 使用条件: 圧力や温度はどの程度か。
- 操作性: 手動か自動か。開閉頻度は高いか。
- メンテナンス性: 部品交換のしやすさや、点検の頻度。
- コスト: 本体価格だけでなく、維持管理にかかる費用(ライフサイクルコスト)も考慮する。
これらの要素を的確に評価し、プラント全体の効率と安定性を最大化するバルブを選定することが、優れた水処理技術者の腕の見せ所です。
■ まとめ:バルブの選定は水処理の要
水処理プラントにおけるバルブは、多種多様な選択肢の中から、用途や条件に応じて最適なものを選び出す必要があります。バルブのトラブルは、水漏れや流量不良に直結し、プラント全体の機能停止にも繋がりかねない重大な問題です。
バルブの選定やメンテナンス、既存設備の改善についてお悩みの際は、信頼できる専門業者へ相談することをお勧めします。
専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。