水処理管理におけるBODの分類と測定意義 ― ATU-BODおよび非溶解性BODの理解

水処理施設の設計や維持管理において、最も頻繁に用いられる指標の一つがBOD(生物化学的酸素要求量)です。しかし、現場の数値が「なぜか設計値より高い」「処理水が白濁している」といった課題に直面した際、単なるBODの値だけでは原因を特定できないことがあります。
本記事では、水処理の専門家が知っておくべきBODの内訳と、その測定の種類について詳しく解説します。
1. BODの基本概念と水処理における役割
BODは、微生物が水中の有機物を分解する際に消費する酸素量を示します。水処理においては「汚れの濃度」を測る尺度ですが、実はこの数値には「炭素源」によるものと「窒素化合物」によるものの2種類が混在しています。
一般的にBOD5(5日間培養)として測定されますが、排水の種類によっては、5日間の中で窒素の酸化が始まり、数値が跳ね上がってしまうケースがあります。
2. C-BOD(炭素由来BOD)とN-BOD(窒素由来BOD)
BODの内訳は、大きく以下の2つに分類されます。
- C-BOD(Carbonaceous BOD): 有機炭素化合物(糖類、タンパク質、油脂など)を微生物が分解する際に消費される酸素量です。通常の二次処理(生物処理)で主に除去対象となるのはこちらです。
- N-BOD(Nitrogenous BOD): アンモニア性窒素などの窒素化合物が、亜硝酸菌や硝酸菌(硝化菌)によって酸化される際に消費される酸素量です。
3. ATU-BOD:硝化抑制剤を用いた精密測定
前述のN-BODの影響を排除し、純粋に有機物(炭素源)の負荷を知りたい場合に用いられるのがATU-BODです。
測定時に硝化抑制剤(アリルチオ尿素:ATU)を添加することで、硝化菌の働きを止め、C-BODのみを測定します。 「放流水のBODが基準値を超えたが、実はその大半が窒素の酸化によるものだった」というケースは少なくありません。この場合、有機物の除去不足ではなく、硝化管理のコントロールが必要であるという正しい診断を下すことができます。
4. 溶解性BOD(S-BOD)と非溶解性BOD(P-BOD)
もう一つの重要な視点が、形状による分類です。
- S-BOD(Soluble BOD): 水に溶けている有機物。微生物が直接摂取しやすいため、分解速度が速いのが特徴です。
- P-BOD(Particulate BOD): 浮遊物質(SS)として存在する有機物。これらは「非溶解性BOD」とも呼ばれ、物理的な沈殿やろ過で除去可能です。
処理水のBODが高い場合、それが「溶け残っている(S-BOD)」のか、「微細なフロックが流出している(P-BOD)」のかを分析することで、曝気槽の調整を行うべきか、沈殿池の凝集管理を見直すべきかの判断材料となります。
まとめ:正確な指標理解が水処理の最適化を生む
BODという一つの指標をとっても、その中身を分解して考えることで、トラブルの本質的な原因が見えてきます。窒素の影響なのか、固形物の流出なのか、あるいは分解しにくい有機物なのか。これらを切り分けることが、コスト削減と安定操縦への近道です。
排水処理の数値管理や改善策にお悩みの際は、まずは信頼できる専門業者へ相談することをお勧めします。
もし、身近に相談できる専門業者がいない場合や、現在の管理手法について「第三者の客観的な意見を聞きたい」という時は、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にお問い合わせください。データに基づいた最適な水処理ソリューションをご提案いたします。

