【初心者向け】活性汚泥プロセスの管理指標:SV30(汚泥沈降率)とは?

活性汚泥法は、多くの下水処理場や工場排水処理施設で採用されている生物学的な水処理の中核技術です。

この方法で安定した処理水質を得るためには、主役である活性汚泥(微生物の集合体)の状態を日々把握し、適切に管理することが非常に重要となります。

今回は、活性汚泥の状態を知るための基本的かつ重要な管理指標の一つである「SV30(汚泥沈降率)」について、その測定方法、意味、そして管理における活用法を初心者向けに解説します。

SV30とは、「Sludge Volume 30 minutes」の略で、活性汚泥混合液(曝気槽内の、活性汚泥と処理対象の水が混ざった液)を1リットル(1000mL)のメスシリンダーに採取し、30分間静かに置いたときに、沈殿した活性汚泥が占める容積の割合(百分率、%)を示す指標です。

日本語では「汚泥沈降率(おでいちんこうりつ)」や「30分間汚泥沈降試験」などと呼ばれます。

この試験は、特別な分析機器を必要とせず、メスシリンダーとタイマーがあれば現場で誰でも簡単に測定できるため、日々の運転管理で広く用いられています。

SV30の測定は以下の手順で行います。

  1. 試料採取: 曝気槽の出口付近など、槽内の活性汚泥の状態を代表する場所から、バケツ等で活性汚泥混合液を採取します。
  2. メスシリンダーへ注入: 採取した混合液を、泡立ったり汚泥のフロック(塊)が壊れたりしないように注意しながら、1リットルのメスシリンダーの1000mLの目盛りまで静かに注ぎ入れます。
  3. 静置: メスシリンダーを水平で安定した場所に置き、タイマーを使って正確に30分間、静かに放置します。この間、振動などを与えないように注意します。
  4. 読み取り: 30分経過後、メスシリンダーの側面から、沈降した汚泥層と上澄み液との境界面(汚泥界面)の目盛りを読み取り、沈降汚泥の体積(mL)を記録します。
  5. 計算: 以下の式を用いてSV30(%)を算出します。 SV30 (%) = (30分後の沈降汚泥体積 [mL] / 1000 mL) × 100

SV30は、主に活性汚泥の「沈降性(ちんこうせい)」、つまり活性汚泥がどれくらい速く、そして密に沈むかという性質を表します。

活性汚泥法では、曝気槽で微生物が水中の汚れを分解した後、最終沈殿池という槽で活性汚泥を沈降させて除去し、上澄みのきれいな処理水と分離します。この最終沈殿池での固液分離が、処理全体の成否を左右する重要な工程です。

したがって、活性汚泥が良好な沈降性を持つことが、安定した水処理を行う上で極めて重要になります。

SV30を測定することで、この沈降性の良否を日常的にチェックすることができます。

もしSV30の値が高すぎる(沈降性が悪い)状態が続くと、最終沈殿池で汚泥が沈みきらずに処理水と一緒に流れ出てしまい(キャリーオーバー)、処理水質が悪化する原因となります。

SV30の適切な値は、処理場の種類や設計、流入水の性質、運転方法などによって異なりますが、一般的には20~40%程度が良好な状態の目安とされることが多いです。

ただし、絶対的な基準ではなく、日々の測定値を記録し、その変化傾向(トレンド)を見ることが重要です。

  • SV30が高い場合(例:50~70%以上が続く): 活性汚泥の沈降性が悪化している兆候です。主な原因として、糸状性微生物が過剰に増殖してフロックが軽く膨らむ「バルキング(汚泥膨化)」や、単純に曝気槽内の汚泥濃度(MLSS)が高すぎることなどが考えられます。対策としては、原因に応じた運転条件の調整(DO管理、BOD-MLSS負荷、汚泥引き抜き量の調整など)が必要です。
  • SV30が低い場合(例:15~20%以下): 曝気槽内の汚泥濃度(MLSS)が低い、あるいは汚泥フロックが細かく分散している「解体(ピンフロック)」状態などが考えられます。沈降は速いものの、上澄み液が濁りやすくなることがあります。

SV30の値は、曝気槽内の汚泥濃度(MLSS)によっても変動します。例えば、同じ沈降性の汚泥でも、MLSSが高ければSV30は高くなる傾向があります。

そのため、汚泥濃度によらず沈降性を評価する指標として「SVI(Sludge Volume Index:汚泥容量指標)」が用いられます。

SVIはSV30とMLSSの値から計算され(SVI = SV30[%] × 10000 / MLSS[mg/L])、活性汚泥の性状をより客観的に評価するのに役立ちます。

SV30と合わせてSVIも管理指標とすることが一般的です。

SV30を安定した管理指標とするためには、以下の点に注意して測定を行いましょう。

  • 採取場所の統一: 毎回同じ場所から、槽内を代表する試料を採取します。
  • 丁寧な操作: 試料採取時やメスシリンダーへの注入時に、汚泥フロックを壊さないように静かに扱います。
  • 正確な時間管理: 静置時間は正確に30分を守ります。
  • 正確な読み取り: 汚泥界面は、メスシリンダーの真横から水平に見て正確に読み取ります。
  • 傾向の把握: 可能であれば、5分、10分、15分など、途中の沈降状況も記録しておくと、沈降速度の変化から汚泥の状態をより詳しく推測できます。

SV30は、特別な装置を使わずに現場で容易に測定でき、活性汚泥の沈降性を迅速に把握できる、日々の運転管理において非常に有効な指標です。

このSV30の値を継続的に測定・記録し、MLSS、SVI、DO(溶存酸素)、顕微鏡観察などの他の管理指標と総合的に評価することで、活性汚泥プロセスの状態を的確に把握し、問題の早期発見や未然防止、そして安定した水処理の実現に繋げることができます。

活性汚泥の状態が思わしくない、SV30の値が安定しない、原因が特定できないなど、運転管理でお困りの際は、経験豊富な専門業者に相談することが解決への近道となる場合があります。

専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。

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