工場の水処理における節水と省エネの両立―全体最適化の重要性―

工場の持続可能な運営において、節水省エネは重要な経営課題です。しかし、この二つの取り組みは、時に相反する結果を招くことがあります。本記事では、工場の水処理における節水と省エネの適切なバランスと、全体最適化の考え方について解説します。


節水と省エネのトレードオフ関係

環境負荷低減やコスト削減を目指し、節水を推進する工場は少なくありません。例えば、循環利用率を向上させるために高度な膜処理装置やエバポレーター(蒸発濃縮装置)を導入するケースが挙げられます。

これらの設備は確かに使用水量を大幅に削減できますが、その一方で、高圧ポンプや加熱・冷却プロセスで多くのエネルギーを消費します。節水には成功したものの、結果として電力消費量が増加し、CO2排出量が増えてしまっては、真の環境貢献とは言えません。

逆もまた然りです。省エネルギーを目的として、ポンプのインバーター制御を導入したり、ブロワーの風量を最適化したりすることで、電力消費は削減できます。しかし、その結果として処理能力が低下し、従来よりも多くの水を使用しなければならなくなる、あるいは水質が悪化して再利用できなくなるといった本末転倒な事態も起こり得ます。


「電力」だけではない、工場全体のエネルギー収支

省エネを考える際、私たちはつい「電力」のみに注目しがちです。しかし、工場全体を見渡すと、様々な形態の未利用エネルギーが存在します。

排熱・廃冷熱の有効活用

コンプレッサーやボイラー、生産設備などからは、多くの排熱が発生しています。これらの熱は、これまで大気中に放出されるだけでしたが、熱交換器を介して水処理プロセスの加温に利用したり、吸収式冷凍機を稼働させて冷熱を作り出したりすることが可能です。

例えば、温度の高い排水がそのまま放流されている場合、その熱を回収し、給水の予熱に利用するだけで、ボイラーの燃料使用量を削減できます。逆に、LNG(液化天然ガス)の気化プロセスで発生する廃冷熱を冷却水として利用すれば、冷凍機を稼働させる電力を削減できます。

コージェネレーションシステムとの連携

自家発電設備であるコージェネレーションシステム(CGS)は、発電時に大量の排熱を発生させます。この排熱を蒸気や温水として回収し、水処理設備の加温や濃縮プロセスの熱源として利用することで、エネルギー効率を飛躍的に高めることができます。電力と熱を同時に供給できるCGSは、工場全体のエネルギーマネジメントの核となり得る存在です。


水処理における全体最適化のアプローチ

節水と省エネのバランスを取るためには、個別の設備改善だけでなく、工場全体の水とエネルギーの流れを俯瞰的に捉える「全体最適化」の視点が不可欠です。

  1. 現状把握(エネルギー診断・水利用診断): まずは、工場内で「どこで、どれくらいの水とエネルギーが、どのように使われているか」を正確に把握します。排水の温度や流量、各設備の電力消費量などを詳細に計測・分析することが第一歩です。
  2. 熱源と利用先ののマッチング: 回収可能な排熱・廃冷熱の「温度レベル」と、熱を必要としているプロセスの「要求温度レベル」を整理し、最も効率的な組み合わせを見つけ出します。
  3. 水処理プロセスの見直し: 最新の省エネ型水処理技術(例:省エネ型MVR蒸発装置、低圧RO膜など)の導入を検討します。その際も、単体の性能だけでなく、既存設備や排熱利用との連携を考慮して評価することが重要です。

まとめ:専門家による多角的な視点の重要性

節水と省エネは、どちらか一方を追求するだけでは最適な結果は得られません。両者のバランスを取り、工場全体のエネルギー効率を最大化するためには、水処理技術と熱利用技術の両方に精通した専門的な知見が不可欠です。

もし、自社の水処理におけるエネルギーコストの高さや、節水と省エネのバランスについて課題を感じているのであれば、専門業者に相談することをお勧めします。






専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。

water-admin