水処理における主要な膜分離技術の概要と特性

工場排水や純水製造など、様々な産業分野において水処理は不可欠なプロセスです。その中でも、膜分離技術は省エネルギーかつ高効率な分離・精製方法として広く活用されています。
本稿では、水処理で用いられる主要な膜の種類について、その概要と特性を解説します。
精密ろ過膜(MF膜)
精密ろ過膜(Microfiltration Membrane)は、孔径が0.1μm~10μm程度の膜であり、比較的大きな粒子や懸濁物質、細菌などを除去するのに用いられます。
- 特徴:
- 比較的低圧で運転が可能
- 高い処理流量
- 前処理としての利用が多い
- 主な用途:
- 上水の浄化における一次処理
- 排水処理における懸濁物質の除去
- 限外ろ過(UF膜)や逆浸透(RO膜)の前処理
限外ろ過膜(UF膜)
限外ろ過膜(Ultrafiltration Membrane)は、孔径が0.01μm~0.1μm程度の膜であり、コロイド状物質、高分子有機物、ウイルスなどを除去できます。
- 特徴:
- 精密ろ過膜よりも細かい物質を除去可能
- 比較的高い処理水質
- 中空糸膜や平膜など多様な形状がある
- 主な用途:
- 飲料水の製造
- 食品工業における分離・濃縮
- 排水のリサイクル
ナノろ過膜(NF膜)
ナノろ過膜(Nanofiltration Membrane)は、孔径が数ナノメートル(nm)程度の膜であり、多価イオンや低分子量の有機物などを除去する能力を持ちます。
- 特徴:
- 逆浸透膜よりも低い圧力で運転可能
- 硬度成分や色度成分の除去に有効
- 選択的な物質分離が可能
- 主な用途:
- ボイラー水の軟化
- 地下水の硝酸性窒素除去
- 特定物質の回収
逆浸透膜(RO膜)
逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane)は、非常に緻密な膜であり、水分子よりも小さな溶解性塩類やイオン、有機物などを除去することができます。高い純度の水を製造するのに不可欠な技術です。
- 特徴:
- 最も高い分離性能
- 高い運転圧力が必要
- 前処理が重要
- 主な用途:
- 海水淡水化
- 超純水の製造(半導体工業、医薬品工業など)
- 排水の高度処理
まとめ
本稿では、水処理における主要な膜分離技術である精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)の概要と特性について解説しました。それぞれの膜は、除去できる物質のサイズや運転条件などが異なり、処理対象の水質や求められる処理水質に応じて適切な膜を選択することが重要です。
水処理設備の導入や見直しをご検討の際は、専門業者にご相談いただくことをお勧めします。
専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。