水処理の心臓部!曝気ブロワ徹底比較:ルーツブロワとターボブロワの特性と更新のメリット
工場の安定稼働や環境コンプライアンスにおいて、排水処理、特に活性汚泥法を用いた水処理は不可欠なプロセスです。その中でも「曝気(ばっき)」は、微生物の活動を支える心臓部とも言える重要な工程であり、この曝気にかかるエネルギーコストは、水処理施設全体の運転コストの大部分を占めることも少なくありません。
今回は、その曝気工程で使用される主要な送風機(ブロワ)である**「ルーツブロワ」と「ターボブロワ」**に焦点を当て、それぞれの仕組みや特徴を比較し、どのような場合に更新を検討すべきか、そのメリットについて技術的な観点から解説します。
曝気ブロワの役割と水処理における重要性
曝気とは、排水処理槽に空気を送り込み、水中の微生物(活性汚泥)に酸素を供給する操作です。微生物は、この酸素を利用して排水中の有機物を分解・浄化します。
ブロワは、この曝気に必要な空気を送り込むための装置です。ブロワが停止すれば微生物は死滅し、水処理機能は完全に停止してしまいます。また、24時間365日稼働し続けることも多いため、その消費電力と信頼性は、工場の運営コストと安定性に直結する極めて重要な要素となります。
長年の実績と信頼性「ルーツブロワ」
ルーツブロワは、古くから多くの水処理施設で採用されてきた、実績のあるブロワです。
仕組みと特徴
繭型のローターが2つ、互いに非接触の状態で同期して回転することで、空気を吸い込み、吐出口から圧送する容積式の送風機です。
- メリット:
- 構造がシンプルで堅牢: 故障が少なく、メンテナンスが比較的容易です。
- 幅広い回転数で安定した風量: 低回転域でも安定して空気を送ることができ、風量の変動が少ないです。
- 比較的安価な導入コスト: ターボブロワと比較して、初期投資を抑えることができます。
- デメリット:
- 運転音・振動が大きい: 機械的な接触がないとはいえ、構造上、騒音や振動が発生しやすいです。
- 効率の限界: ターボブロワと比較すると、エネルギー効率は劣る傾向にあります。
- 潤滑油の必要性: ギアや軸受に潤滑油が必要で、定期的な管理が求められます。
省エネルギー時代の主流「ターボブロワ」
近年、環境意識の高まりや電気料金の上昇を背景に、急速に普及が進んでいるのがターボブロワです。
仕組みと特徴
高速回転する羽根車(インペラ)によって空気に運動エネルギーを与え、その速度を圧力に変換して空気を送り出す非容積式の送風機です。
- メリット:
- 卓越したエネルギー効率: 同程度の風量を送る場合、ルーツブロワに比べて大幅な消費電力削減が期待できます。
- 低騒音・低振動: 回転部分が非接触であり、高速回転ながら運転は非常に静かで振動も少ないです。
- オイルフリー: 空気流路に潤滑油を使用しないため、クリーンな空気を供給でき、油による環境汚染のリスクがありません。
- 省スペース: コンパクトな設計の製品が多く、設置面積を小さくできます。
- デメリット:
- 高価な導入コスト: ルーツブロワに比べて、本体価格は高価になります。
- サージングのリスク: 対応範囲以下の低風量で運転を続けると、空気の逆流(サージング)が発生し、不安定になる可能性があります。適切な制御が必要です。
【比較】ルーツブロワ vs ターボブロワ 選定のポイント
どちらのブロワが最適かは、施設の規模、求められる風量、運転条件、そして省エネに対する投資方針によって異なります。
比較項目 | ルーツブロワ | ターボブロワ |
エネルギー効率 | 標準 | 非常に高い |
導入コスト | 安い | 高い |
運転音・振動 | 大きい | 小さい |
メンテナンス | 潤滑油の管理が必要 | フィルタ清掃が主 |
設置面積 | やや大きい | 小さい |
適した用途 | 小規模施設、風量変動が少ない用途 | 大規模施設、省エネを最優先する用途 |
どのような場合に更新を検討すべきか?
以下の項目に当てはまる場合、ブロワの更新、特にルーツブロワからターボブロワへの更新は大きなメリットをもたらす可能性があります。
- 設置から10年以上経過したルーツブロワを使用している
- ブロワの電気料金が、工場全体のコストを圧迫している
- ブロワの騒音や振動が、周辺環境や労働環境の問題となっている
- 故障やメンテナンスの頻度が増加している
- 工場の省エネ目標(カーボンニュートラル)達成に向けた施策を探している
特に、消費電力の削減効果は絶大です。施設の規模や稼働状況にもよりますが、ターボブロワへの更新によって、ブロワの消費電力を20%~30%以上削減できるケースも少なくありません。これは年間の電気料金に換算すると、数百万円単位のコスト削減に繋がる可能性を秘めています。初期投資は高価ですが、数年間のランニングコスト削減で十分に回収できる場合が多く、長期的な視点で見れば非常に有効な投資と言えるでしょう。
まとめ
曝気ブロワの選定や更新は、水処理の安定稼働とコスト削減を両立させるための重要な経営判断です。旧来のルーツブロワが持つ堅牢性も依然として魅力的ですが、近年のエネルギーコストの上昇を鑑みると、ターボブロワが持つ高い省エネ性能は、それを上回るメリットをもたらすことが多くなっています。
まずは、現在お使いのブロワの運転状況や消費電力を正確に把握し、更新によってどの程度のメリットが生まれるのかを試算してみることが第一歩です。
水処理設備のことでお悩みの際は、まずはお近くの専門業者にご相談することをお勧めします。
専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。