水質計器の校正の重要性：安定した水処理を実現するための基本
工場の安定稼働や環境コンプライアンスにおいて、適切な「水処理」は極めて重要な役割を担っています。その水処理の成否を左右するのが、日々の水質管理です。そして、その水質管理の根幹を支えているのが、pH計、導電率計、DO計といった様々な水質計器です。
これらの計器が示す数値を信じて、私たちは薬品の注入量を調整し、排水の安全性を確認しています。しかし、その数値がもし「不正確」であったとしたら、どのようなリスクがあるでしょうか。今回は、水処理の現場で意外と見過ごされがちな「水質計器の校正」の重要性について解説します。
なぜ水質計器の校正が必要なのか？
水質計器に設置されているセンサーは、常に測定対象となる水に接触しており、時間の経過とともに必ず劣化や汚損が進行します。これにより、測定値が少しずつ本来の値からずれてしまうのです。
校正を怠り、この状況を放置してしまうと、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 薬品注入量の過不足: pH計の指示値がずれていると、中和剤などの薬品を過剰に投入してコスト増やスラッジ（汚泥）の増加を招いたり、逆に投入量が不足して処理が不完全になったりします。
- 排水基準値の超過: 正確な測定ができていないために、知らず知らずのうちに排水基準を超過した水を放流してしまい、行政指導や罰則の対象となるリスクが高まります。
- 生産品質の低下: 製造プロセスで用いる工業用水の水質が管理できていないと、製品の品質に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 設備の腐食やスケール障害: 不適切な水質は、配管の腐食やスケール（水垢）の付着を促進させ、設備の寿命を縮める原因となります。
これらのリスクを回避し、安定した水処理を継続するためには、定期的な計器の校正が不可欠なのです。
校正作業の基本的なポイント
校正とは、値が分かっている標準液（校正液）を用いて、計器の指示値を正しい値に合わせ込む作業のことです。ここでは、校正を行う上での基本的なポイントをいくつかご紹介します。
1. 標準液の適切な管理
校正の基準となる標準液が不正確では、元も子もありません。標準液は、有効期限内のものを使用し、メーカーが推奨する適切な温度で保管してください。一度使用した標準液をボトルに戻したり、長期間空気に触れさせたりすると、濃度が変化してしまうため注意が必要です。
2. センサーの洗浄
校正を行う前には、必ずセンサーを純水などで丁寧に洗浄し、付着した汚れを落とすことが重要です。特に、油分やスケールが付着していると、センサーが正しく反応できず、正確な校正ができません。
3. 温度補償の理解
多くの水質測定は、水温の影響を受けます。特にpHや導電率の測定では、温度による指示値の変化が大きいため、計器が持つ温度補償機能が正しく働くように設定されているか、また、標準液と測定対象水の温度が大きく乖離していないかを確認することが大切です。
校正の頻度はどれくらいが適切か？
適切な校正頻度は、計器の種類、設置されている環境、そして求められる測定精度によって異なります。例えば、汚れやすい排水処理の現場では週に1回、あるいはそれ以上の頻度が必要な場合もあれば、比較的クリーンな用水管理では月に1回程度で十分な場合もあります。自社の水処理における重要度を考慮し、最適な校正頻度の基準を設けることが望ましいでしょう。
最も重要なこと：メーカーの取扱説明書に従う
ここまで校正の重要性について述べてきましたが、最も基本的で重要なことは「メーカーの取扱説明書に記載された手順に正しく従うこと」です。水質計器は、メーカーや機種によって操作方法や校正手順が異なります。自己流の解釈で操作を行うと、計器の故障や、より大きな測定誤差を生む原因にもなりかねません。必ず手元に取扱説明書を準備し、その指示に忠実に従って作業を行ってください。
まとめ
水質計器の定期的な校正は、日々の安定した水処理を実現し、事業リスクを低減させるための基本的なメンテナンス作業です。正確な「数値」に基づいた水質管理こそが、水処理の品質を向上させる第一歩と言えるでしょう。
もし、校正方法に不安がある、自社に最適な管理方法が分からないなどのお悩みがあれば、まずは計器メーカーや専門のメンテナンス業者に相談することをお勧めします。
専門業者が周りにいない時や、第三者の意見を聞きたいときは、工場のセカンドオピニオンであるウォーターデジタル社にぜひお問い合わせください。
